僕の親父は毎晩酒を飲んでいた

 

僕の記憶では、

僕が小学1年生のときから

親父が重度の糖尿病で救急車で搬送されて入院するまで(たしか僕が24歳くらい)

欠かさず毎晩酒を飲んでいたようだ

 

別に親父はアル中でもなんでもない

ただ毎晩決まって酒を飲むごくごく普通の親父

 

親父は酒を飲むと自分のことを

 

“俺はアルチュハイマー”

(アルツハイマーとかけてるらしい)

 

と、よく言っていた

 

親父は特にビールが好きでそればかり飲んでいた

 

 

僕が中学生のとき、親父があまりに毎晩うまそうにビールを飲むもんだから一口もらった

 

 

ウゲェ  マズゥ〜

 

 

苦くてクソまずい

 

これのどこがうまいのか理解ができなかった

 

 

中学生の僕は親父に尋ねた

 

“(僕)これの何がうまいの?”

 

“(親父)子供にはわからんよ。味もいいけど、酔う感じがいいんだな”

 


 

 

やはり理解はできない

 

 

ただ、うまそうに酒を飲むのは親父だけではない

小学生のとき少年野球をやっていたのだが、そこにコーチとしてやって来るのは自分たちの親父達

 

 

この親父達は僕たちの練習が終わると、打ち上げと称して酒を飲んでいた

 

 

“クァー  うまい”

 

 

酒を口にしたすべての大人のひとこと目がこれだった

 

大人はみんな酒が大好きで、酒がうまい

 

小学生の僕は

 

“なぜ大人は酒を飲むのか?”

 

疑問に思った

酒じゃなくてもコーラとかで十分じゃないのか?

 

中学生になってもこの疑問はわからないままだった

 

 

高校生になり、カッコつけて友達と集まったときだけごく稀に酒を飲むようになった

親父は僕が友達の家に泊まりに行くとき、決まって6本入りのビールを渡してくれた

おそらく、僕がほんの少しだけどお酒が飲めるのがうれしかったのだろう

 

当時の親父の決まり文句が

 

“酒はいいけどタバコはダメだぞ”

 

本当はどっちもダメなんだけど、酒は自分が好きだからokなのだろう

 

高校生で酒の味なんかわかっちゃいなかったし、飲む理由もない

ただカッコつけて大人ぶりたかっただけ

 

“なぜ大人は酒を飲むのか?”

 

は疑問のままだった

 

 

でも高校2年のとき、ほんの少しだけわかりかけたことがあった


 

 

その日すごい嫌なことがあって、

実家の車庫にあるビール瓶を、勢いだけで2本飲んだ

 

当時、僕の家の車庫にはビール瓶のケースが常時4ケース具備されていた

 

僕はこのとき始めて、酒を飲むことに理由をつけた

 

 

社会人になって、居酒屋とか行ったり、酒を飲む機会が増えた

 

 

 

周りを見るとサラリーマンたちが酒を飲み、酔っ払っている

 

 

熱くなる奴もいれば

泣く奴もいる

 

喧嘩腰になる奴もいれば

よく笑う奴もいる

 

騒ぐ奴もいれば

なだめる奴もいる

 

中には、程よく酔って自分の世界に入っている奴もいる


 

 

仕事が終わり

酒を飲み、色んな感情をぶちまける

それで朝起きたらまた仕事に行く

 

 

僕は

“なぜ大人は酒を飲むのか?”

なんとなくわかってきた

 

 

 

酔わなきゃやってらんないからだ

 

 

 

その手助けとして酒を飲んでいるのだ

 

 

 

今日も明日も好きでもない仕事をやり、

長い時間を会社にこき使われ、

上司や客に怒られ、頭を下げ、

あげく安月給

 

 

酔わなきゃやってらんないのだ

 

 

高校2年の僕も、その時その瞬間だけは、どうにも酔わなきゃやってらんなかったんだと思う

 

 

僕は社会人になってから再び親父に尋ねた

 

“(僕)親父  なんで毎日酒飲んでんの?うまい?俺は全然おいしくないんだけど”

 

“(親父)うまいよ。お前、そりゃ飲まなきゃやってらんないよ”

 

 

 

親父はゴチゴチのサラリーマンだからなんとなくわかる

本当に毎晩酔わなきゃやってらんないんだ

 

僕は社会人になってから、酒を飲む親父を見ると、少し悲しさと悔しさが混じった不思議な感情を持つようになった

 

 

僕は今年で34歳になる

酒はほとんど飲まない

ビール、日本酒は不味くて飲めない

 

大人がなぜ酒を飲むかはわかった

酔わなきゃやってらんないのもわかる

僕も”酔わなきゃやってらんない”ときがある

 

でも僕は“酒”で酔おうとは思わない

それをしても何にもならないからだ

その代わり僕らは、喫茶店でコーヒー片手に”夢や理想”などの酔っ払ったことを言って酔う

 

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